腐れ外道道は一日にして成らず



謎の超古代生物を喰らう

- 2000 3/14 -



ボクがまだ学生だった頃、なにかの雑誌(週刊少年ジャンプ?)だかで、
シーラカンスを食べるといったイカス企画を見た憶えがある。
知らない人はいないと思うけど、シーラカンスてぇのはデボン紀末期に地球上に現れた古代魚で、
なぜだか今の今まで当時の姿のまま生き続けている為(厳密には少し違うらしいが)、
「生きた化石」なんて呼ばれちゃったりしてる、あの魚です。(画像を貼り付けるまでもないよな)
で、コモロ諸島だかで捕獲したその魚を冷凍状態で日本に持ち込み、いろんな調理を施して
食べてみようっていうボクのハートを揺さぶりまくる、とってもイカした企画だったわけです。
残念ながら、そのシーラカンスがどんな調理を施されのかについては記憶に残ってない
のだけれど(たしか、焼く、煮る、寿司、だったような...)、ティスティングの結果は参加者全員一致で
「煮ても焼いても喰えない、この世で一番マズい魚」
ということだった。
ちなみに、シーラカンスが糞マズい原因っていうのは「アミノ酸が発達(?)していないからだろう」と
書かれていたように思う。
なるほど、シーラカンスのマズさっていうのは肉にゼンゼン「旨味」が無いわけね。
そしてボクは、なんだか進化の源流をカンジさせるなぁ...できるものならボクも食べてみたいなぁ...
と思ったのでした。

それから何年経った日の事だろうか...
とあるマニアックな熱帯魚屋でオウム貝が 売られているのを発見したのです。
「コイツってシーラカンスと同じ時代から生きてる古代生物だったよな、確か!」
そう、オウム貝(ノーチラスタイト)とは、あのアンモナイトの近縁 (もちろん見た目もよく似てる)の頭足類で、やはり古生代デボン紀に出現したバリバリの 筋金入りの古代生物ナノデス!
で、こいつはなにが凄いかって、6500万年前の白亜紀末に恐竜やアンモナイトなどの多くの生物が死滅した わけだけど、なぜだかコイツはシーラカンスと同様チャッカリ現代まで生き残ってるってこと。 イカスー! つーことは、
「やっぱ、こいつもシーラカンス同様、煮ても焼いても喰えないくらいにマズいんだろうか?」
と考えないほうがおかしいワケで!   しかし、その値段、1匹8000円也!そんなモン高くて買えねぇよ、チクショウ!  というわけで、「将来お金持ちになったら食べよう...」と心に誓ったボクなのでした。


そして今、お金持ちになったわけじゃなくて、将来的に金持ちになれる可能性が限りなく低い事が
わかったので、あの「ネット乞食基金」を投入し、オウム貝を喰い散らかすことにしたわけで。


「ご注文のオウム貝が入荷しました」と連絡を受けたのは2000年3月14日の事だった。
小雨が降る中、「ネット乞食基金」の1万円を握り締め、とある観賞用海水魚専門店を訪れると、
店主が問屋から帰ってきたところだった。 店主が大事そうに抱えるビニール袋には、たっぷりと
海水が詰められており、その中に一匹のオウム貝がユラユラと泳いでいる。
見れば喰うのがもったいないくらいに立派なオウム貝だ。
ふいに店主から質問を受ける。 「お客さん、いつもエサはなにをやってるの?」
焦る事なく、すぐさま答えるボク。
「冷凍のオキアミをやってます。やっぱこれが一番喰いがいいですね」
完璧だった。 完璧な大嘘だった。
事前にイソターネッツ上で情報を収集し、店主からのいかなるマニアックな質問にも
答えられるようにと備えていたボクの勝利だった。そう、この手のマニアックな店主は、
客にペットを飼育できる知識と技量が無いと判断した場合、下手すると売ってくれない事が
考えられるのだ。てゆうか多分ボクの考えすぎだと思うけど。 イヒヒ

実は、この店主に聞いておきたい事が一つだけあった。
それは、「オウム貝は毒を持っていないかどうか?」ということ。
イソターネッツ上でかき集めた情報の中には、毒の有無に触れるものは無かったのだ。
おそらく大丈夫だろうとは思うが、なにせ相手は恐竜を死滅へと追いやったなんらかの
地球規模の要因すらもモノともせず、現代まで生き抜いてきた謎の超古代生物なわけで。
いまだ人類の知りえない猛毒やウイルス、寄生虫の類を有しているかもしれないという
不安は拭いきれない。(とりあえず生で食べたりはしないので、心配なのは毒だけ)
しかし、その事を「オウム貝を喰う気でいる事」を悟られぬように聞き出すのは無理だった。
とほほ。 まあいいや。毒があったら運が悪かったってことで...
それが原因で死ぬのも腐れ外道道かもしれないな、なんて。

オウム貝、一匹9800円也。
「アワビなんてメじゃねえよ!」って言うくらいの超高級魚介類だ。
そんじょそこいらの魚介類とはワケが違うね。 おいそれと買えるもんじゃあないナリ。
こいつだけは築地の魚市場に行ってもゲッツできないだろうよ。
てゆうか、オウム貝ってワシントン条約には抵触しないんだろうな。
喰っちゃって逮捕されるのは勘弁だぞ


ちょうど今日、北朝鮮に拉致られる可能性が日本で一番高い事で有名な漫画家
にらけら」の二人が遊びに来る事になってるので、
ちょうどよかったカモ。 あの二人にも食べさせちゃおっと。これもなにかの縁なわけで、
もしオウム貝が猛毒を有してた場合は道連れだな。 ギヒヒ

* この日の出来事は「日経ネットナビ・6月号」の「電磁波交遊録 BY にらけら」に載るかもしれないとのこと




めちゃくちゃ嫌がるにらちづる嬢に、オウム貝を持ってもらう。イヒヒ




「サザエ」と「赤貝」で「オウム貝」をホールドして、セッティング完了!
目指すはオウム貝のつぼ焼き




グツグツグツグツ...
これはコンロに点火して5分が経過した頃の写真だけど、この写真を撮った直後、
オウム貝の足?(ニョロニョロした触手みたいなヤツ)が、苦しそうにニョロニョロ
動いているのを見てしまいました。この状態においても、まだ生きているのです。
凄い生命力だと思いました。 ダテに6500万年前から生きてないなってカンジです。




醤油を投入。
このあたりでオウム貝は絶命。




部屋の中に美味しそうな匂いが立ち込める。




調理が完了して、殻から身を引きずり出す。
サザエのように、螺旋状の殻の中まで身が入っているわけではなくて、
殻の入り口付近にへばり付いてるカンジ。




ピンボケだけど、やっぱりこれは貝というよりも、イカだな。
イカと同じ種類の目とクチバシが確認できた。


にらちづる嬢といっしょに、意を決して喰いました。
* けらだんな氏は断食中(マジで)とのことで喰うことができなかったのが残念ナリ。へへへ

むほおぉっ! これが6500万年前の味なのかっ!
てゆうか、味はイカですな。(少し違う気もするケド)
それなりにちゃんと旨味もあるし、香ばしい醤油の香りと相まって、結構美味いと思った。
ただ、イカよりも歯ごたえがある、てゆうか硬いカモ。部分によっては噛むとゴリゴリ音がしたり。

というわけで、古代生物の割に、シーラカンスとは違って美味しいみたいです。
そして、毒は無いと思います。たぶん...

恐竜とともに絶滅し、この地球上から姿を消したアンモナイツも、きっとこんな味だったんだろうな...
ごちそうさま。










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